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2019年1月4日金曜日

2016年6月 一般質問議事録 農業振興計画

荒廃地が広がりイノシシの住み家になっています。60歳以上が9割を占め、農家の高齢化が深刻です。こんな状況を打開しようと、中井町の農業振興計画が策定されようとしています。



会 議 の 記 録(抜粋)
                                平成28.6.7

議     長  続きまして一般質問を行います。
 7番 尾尻孝和君。
尾 尻 孝 和  日本共産党町会議員として、農業振興計画の策定に当たって、町の考え方について伺います。
 杉山町長は、本年度施政方針で、「農業振興では、農業を取り巻く環境が大きく変化するなかで、農業の活性化と持続的発展を推進するため、中井町の農業が目指すべき方向性などを定める農業振興計画を策定」するとされ、本年度予算として農業振興計画策定業務委託料1992,000円が計上されました。
 農業振興計画は、10年計画の戦略の中で、本町の農業の現状、課題を把握し、将来像としてまとめるとされています。この農業振興計画策定を業者に委託するに当たって、町としての問題意識、課題の整理、必要なデータや町民の声など、さまざまに整理されて委託業者に託され、また作成の過程で町と業者間の論議も積み重ねられるものと思います。
 そこで、次の3点について伺います。
 1、農業振興計画の策定が必要と判断された理由。
 2、中井町の農業、これからのまちづくりと農業に関し、どのような問題意識を持ち、どのように整理されて委託されるのか。
 3、作成の過程で業者との協議を重ね、また町民の意見や知恵を広く集め、真に生きた農業振興計画として練り上げるための手だては。
 以上を伺います。
町     長  7番 尾尻議員の「農業振興計画を策定にあたって町の考えは」のご質問にお答えします。
 本町の農業は、比較的小規模な家族経営体による営農形態で露地野菜、果樹、酪農などを中心に行われておりますが、農家数や農業生産額ともに周辺自治体と比較しても劣らず、現在も主な町の産業のひとつとなっております。
 しかしながら、全国的にも課題となっております農業者の高齢化や、農業後継者の農業離れによる担い手不足、またこれらを要因とした耕作放棄地の増加に伴う環境の悪化や有害鳥獣被害の増加のほか、農業を取り巻く環境は厳しい状況にある中、TPPによる大幅な市場開放を迫られることで、更に農業者にとっては厳しいものになると受け止めております。
 このような情勢から、本町の農業が将来に渡り持続・発展し、魅力あるものとなるように、現状と課題を整理し、町の主たる農業経営体である家族経営体の持続発展だけにとらわれず、集落営農や共同作業等による合理化から経営の安定化や、担い手の育成、農地の持つ多面的機能の活用、安全安心な生産と地産地消の推進などを検討し計画づくりをしていきたいと考えます。
 また、目標を達成するために、農商工業者が連携した六次産業化や環境に配慮した農産物の生産等により販売力の向上など、個別の施策に取り組むべく、農業者だけでなく、消費者となる町民や行政が担う役割などの具体的な施策や目標数値等を定め、時代に即した実効性があり戦略的な農業分野の最上位計画となる、農業振興計画を策定することとしたところであります。
 なお、計画を策定にあたっては、大消費地の都市近郊という優位性、水と緑豊かな環境にある地域特性を生かした魅力ある産業として、農業・農地は、単に農作物の供給に限らず、里山の景観を保ち、多面的な機能の充実など様々な分野で役割を担い、次世代に継承することの重要性を鑑み、その指針となるものとしていきたいと考えつつ、本町の農業の持続的な発展は、町民の日常生活の基盤である貴重な財産として、食料の安定供給及び農業の有する多面的機能の発揮、将来の町民の健康で豊かね生活に寄与することに繋がることから、農業者だけでなく消費者となる町民や、行政、関係諸団体など様々な立場からの意見を反映させ協働した計画づくりが、必要且つ重要なことと考えておりますので、ご理解賜りたいと存じます。
尾 尻 孝 和  質問の3点について、それぞれ、今、答弁をいただきました。中井町の農業振興計画がよりよいものに練り上げられるように、またこれからのまちづくりをどのような方向で進めるかという課題にもかかわることとして農業振興計画を位置づけられていることと思います。
 具体的な論議を進めたいと思います。まず、中井町の農業の現状についてですが、中井町の農業耕地の面積と町の総面積に占める割合、それから耕作放棄地の面積と割合はどのようになっていますでしょうか。あわせ、山林面積と割合についてもお願いします。
環境経済課長  お答えいたします。中井町の農地の状況でございますけれども、平成28年の3月現在になりますが、お答えさせていただきます。田については1,117筆で409,000平方メートル、畑が7,887筆ございまして5206,000平方メートル、合計で言いますと、田畑あわせまして561万平方メートルが農地の状況でございます。それから山林のほうですけれども、神奈川県の地域森林計画で示してございまして、中井町の山林が647ヘクタールほどございます。全体で中井町の町域の面積が2,002ヘクタールという形の中で言いますと、農地の占める割合は約30%弱が農地の占める割合、それから山林も含めますと、約50%強が緑が占める割合が本町の数値という形になると思います。
 それから耕作放棄地の面積になりますけれども、今、耕作放棄地の面積は、法律に基づきまして、農業委員会が、毎年、中井町の町域の中の農地の状況を調べなさいというものがうたわれております。昨年、平成27年度に農業委員が現地の調査をした結果になりますけれども、お答えさせていただきます。まず、分類が、農地をトラクターや簡単な機械等で復元できる、再生可能な農地という言い方をしていますけれども、その耕作放棄地が396,000平方メートル、それから、もう既に山林化をしてしまって、機械等、バックホー等、農業用の機械ではとても農地に復元できないという面積が283,000平方メートル、あわせますと731,000平方メートルが農地として利用がされていない面積、全体の農地の面積から言いますと、約30%ぐらいが耕作がされていないというふうな数値になっております。以上です。
尾 尻 孝 和  ただいまいろいろ内訳をそれぞれ伺いました。簡単に言いますと、中井町の、今、耕作放棄地と山林をあわせると、町の面積の約3分の1になるかと思います。現在、山林や竹林の大半は人の手の入らない荒廃地となっており、耕作されなくなり荒廃した土地とあわせて、町の面積の3分の1、これは既に、今、イノシシやシカのすみかになっています。20世紀を通じて、中井町にはイノシシもシカも生息していませんでした。山林に人の手が入らなくなり、農業荒廃地が広がるにつれ、今世紀に入ったころからイノシシの足跡が見つけられるようになって15年、今や人の手の入らない荒廃地、山林は、これら動物たちの格好のすみかになっています。
 伺います。最新の農林業センサスで、中井町の農業就業者の平均年齢、60歳以上の人が占める割合はどのようになっていますでしょうか。それから、普段、仕事として、主に自営農業に従事している人、農林業センサスでは基幹的農業従事者という形で分類していますが、これらの方の平均年齢と、60歳以上の方の占める割合について、あわせ、それぞれの平均年齢の推移は今世紀に入ってどのようになっているか。農業就業人口の推移と割合もお願いします。
環境経済課長  お答えいたします。2010年の世界農林業センサスの数字になりますけれども、中井町の現在の農家数、この農家数といいますと、定義的には10アール以上の農地を所有されている方、もしくは15万円以上の農業収入がある方のことを言っておりますけれども、454戸ございます。そのうち専業農家が73戸、それから兼業、これは農業を主とした兼業農家、第1種兼業農家が36戸、農業以外の、農外所得が大部分を占めている農家が198戸、その中で、差し引きしますと、147戸が土地持ちの非農家、もしくは自給農家という数字が示されております。それから、その中で、尾尻議員おっしゃいます基幹的農業従事者、主に農業のみで生計をされている方が373名ほどございます。2010年の農林業センサスで373名、そこで、その平均年齢が、当時69.1歳、計算しますと69.1歳になりました。それで、2010年といいますと5年前になりますので、単純に5年後の、今、数字で言うと74.1歳、平均年齢が74.1歳という形になります。
 60歳以上の占める割合が、全体90.3%が60.3という高い数字になっております。それから農業就業者、この農業就業者といいますと、1年間に150日以上の農業に従事した者という形で定義されておりますけれども、この方で言いますと、ここの今の数字で498名ほどございますけれども、そのうち85%の427人が現在60歳以上、計算させていただきますと、そういった数字になります。以上です。
尾 尻 孝 和  今、報告いただきました。あわせて、今世紀に入ってからの農業就業人口ですね、これ、ちょっと私、計算してみましたら、15年間で7割まで減っています。基幹的従事者は8割近くに減少しました。そして60歳以上の方が、先ほど話もありましたが、農業就業人口の9割を占めると、このような状況になっています。
 今、中井町の農業は深刻な後継者難、担い手不足に直面しています。なぜこのような深刻な後継者難、あるいは担い手不足が進んだのか、その原因について、その認識をどのようにされていますでしょうか。
環境経済課長  お答えいたします。担い手不足、農業後継者の農業離れという形になるかと思いますけれども、一番大きな問題は、まず農業機械、農業機械を更新するのに、祖父の代、父親の代、お孫さんの代、その3代の中で、どうしても更新という言葉が出てきます。高額な費用を農業収入だけで貯蓄をした預金等では、借金、要は融資を受けてまで更新できるだけの余裕がないというのが、まず1点あるかと思います。
 それから、今、中井町の平均的な農業規模といいますと約60アールになります。1戸当たりの平均規模60アール、そういった中で、経営の農地が少ない。神奈川県の平均的な面積で言いますと83アール、神奈川県全体の中でも、中井町の農地面積というのは1戸当たりで言うと少ない。その中で、要は家族経営の中で農業を続けていくときに、どうしても農業収入が少なくなってしまう。その辺が、会社に勤めるというものと農業を継続するという中で比較したときに、どうしても、祖父、父親、子から、きつい、定年がない、そういういろんな面から、安定収入がないというのも含めまして、後継者として継がせたくないという言葉が家族の中で出てきてしまっているのが実際のところだというふうに認識しております。
尾 尻 孝 和  今、深刻な後継者難、担い手不足の原因について幾つか挙げていただきました。そのとおりだと思います。私は、単純、簡単に、これを一言であらわすと、農業では食っていけない、まさにこれに尽きると思います。中井町でも比較的規模の大きな幾つかの農家で、その息子さんが大学を卒業したら農業をやりたい、そう言っているのに、親がそれを許さない、そういった事例を聞かされました。
 1960年代の高度経済成長期には、一定の規模がある農家では、その長男が当たり前のように農業の後を継いでいました。その後を継いだ人たちが、今では、子どもにはこんな苦労をさせたくない、いくら頑張っても、農業では世間並みの生活ができない、骨身に感じて、子どもに後を継ぐのをやめさせようとしています。
 そこで伺います。中井町が策定しようとしている農業振興計画、そこでは、この問題、農業では食っていけないという問題をどのような方向で解決されようとするのか、いかがでしょう。
環境経済課長  お答えいたします。まず考えられる中井町の地勢ですね、東京、横浜、川崎、大都市を近隣に構える都市近郊型農業という形の中で、大消費地が近く、輸送コストとか、そういったよい条件があるわけです。そういったものを、新たに販路の拡大等、施策に盛り込んだり、それから、採算のとれる、要は、町長の答弁にもございましたけれども、6次産業化とか、環境に優しい野菜づくり、そういったものを取り入れた中で付加価値をつけて、販売力の向上、そういったものを含めて施策に取り込んで、中井町の農業を続けられるように、町行政としてもしっかり取り組んでいきたいというふうに考えております。
尾 尻 孝 和  この問題は大変大きな、しかも困難な課題です。今の答弁も、半ば悲鳴にも聞こえるような答弁だと思います。しかし、あえてこの問題に、今、町として挑もうとされています。まずそのことを私は評価したいと思います。また激励もしたいと考えます。この農業では食っていけないという課題、中井町の農業振興計画だけで何とかしようと思っても解決はつかない、むしろ諦めを助長してしまうことさえ場合によっては起こるのではないかと心配します。
 農産物の価格保障と農家への所得補償で家族農業を支える、農業で世間並みの生活ができるように支える、これは何よりも政府の役割だと考えます。国の一般歳出に占める農業予算の割合、年々削られ続け、今年度はついに1.1%にまでなりました。せめて2001年度の一般歳出の5%、2001年度は一般歳出の5%が農業予算でした。この水準まで戻し、農業の継続に希望がともるようにする、その役割を政府に果たしてもらわなければならないと考えます。そのことと一体にして、中井町の農業振興計画でさらに底上げ、上乗せの独自対策を具体化していく取り組みが大事だと考えます。
 そこで、これは町長に伺います。町民と一緒になって、町としてあらゆるルートを通じ、国の農政の転換を働きかける考えはありますでしょうか。政府に働きかける上で、農業をどうするか、そもそもの問題などにも少し触れていただければと考えます。
町     長  今、議員の質問と、それから課長のほうの答弁の中で、実際に中井の農業は本当に深刻だというふうに思っているところでございます。そうした中で、政府に働きかけ、要するに予算を引き出してくるという働きかけも必要ですけれども、まず中井町の販路拡大、6次産業化でブランドプロジェクトですか、もあるんですけれども、そういった部分でもみんな簡単にできる問題ではないと本当に思っています。全部難しい問題だと思っています。かといって、じゃあ、放置していいかという問題ではございませんので、これはやらなくてはいけないという中で、要するにどうやったら、先ほど議員の言われた、食っていけるか、本当に食べていけるか、やっぱり収入の問題だと思いますね。それをいかにできるかという部分を一緒になって考えていかなくてはいけないのかなというふうに思っております。
 県・国のほうに対して農業予算を上げてくれという、その部分に対しては、単独でいくこともそれは可能です。ただくださいと言う、それは可能ですけれども、そうではなくて、やっぱりその辺の部分で、要するに2市8町とか、県全体とかという、そういったまとまった形で持っていかなくてはならないのかなというふうに思っています。
 そうした中、今まで、この1年半ほど経験した中で、いろんな問題でそういう陳情等の部分で判断するところによりますと、意外と、例えば農業問題においても、全国全体の問題と神奈川県の問題というと、神奈川県のほうが少数意見の形になって、意外となかなか通らないというのが現状、これは農業問題だけではなくて、こういった部分もいろいろ経験はしてきておりますけれども、それにめげずに、一番いい方法、政党要望等も含めて、そういった部分では進めていきたいなというふうに思っているところでございます。
尾 尻 孝 和  国の農業の基本政策の価格保障や所得補償の問題に関連して、そもそもの問題についても少し触れたいと思います。政府は国際競争で打ち勝つ日本農業、国際競争に生き残る日本農業、あるいは攻めの農林水産業、農業・農村の所得倍増、こういったスローガンを掲げます。しかし本音は、世界の市場競争で日本の農家が勝てるわけがない、食料は外国から安く買えばいい、国の予算を非効率な日本の農業に振り向けるのは無駄、これが正直言って本音ではないかと思います。それがTPPの推進であり、農産物完全自由化へと政府を、今、走らせているのではないでしょうか。
 具体的に伺います。中井町では、耕地面積ごとで農家を分類するとどのようになっていますでしょうか。あわせて1戸当たりの平均耕地面積もお願いします。
環境経済課長  お答えいたします。議員おっしゃいます、今、ご質問の、中井町の農業経営の分類という形の中で言いますと、その数字的なものというのは町では把握ができておりません。ただし、中井町の農業形態の主な分類といいますと、大きく5つ、6つに分かれると思います。稲作と露地野菜の組み合わせた農業経営、それから露地野菜と果樹、ミカンですね、の組み合わせ、施設花き・施設野菜、それから酪農と稲作、酪農と飼料畑、そういった組み合わせの中で、中井町の農業という形の中が大きく5つ、6つぐらいに分類されるかと思います。その一つ一つの割合、面積的な割合というんですか、それの把握は、申しわけございません、できておりません。
 それから、先ほど最初の質問のときにお答えさせていただきましたけれども、454戸ある農家のうち、その平均的な経営面積というのは60アール、先ほど言いました神奈川県の平均が83アールなので、中井町のほうが神奈川県の中でも低い数字になっているというところまでは認識しております。以上です。
尾 尻 孝 和  耕地面積の話ですが、オーストラリアの平均経営面積3,385ヘクタール。中井町の面積は、2,002という数字もありますが、1,990ヘクタールという数字もあるかと思います。オーストラリアの平均的農家は中井町の総面積の1.7倍の耕地で農業を営んでいるわけです。これに対して、今、話ありましたように、中井町の農家の平均経営面積、耕地面積はわずか60アール、0.6ヘクタールです。2ヘクタールを超えて耕作している農家は、私、数えましたら14件、5ヘクタールを超える耕作をしている農家は中井町ではないかと思います。平地の少ないなだらかな丘陵地において家族で営々と農耕を営んできた、この中井町農業の特徴を考えれば、国境措置などのさまざまな規制措置なしに条件を異にする外国と競争すること、これにはもともと無理があると考えます。国内農産物の価格保障、農家の所得補償に取り組むことで食料自給率を高めてきたフランスやドイツ、イギリス、こういった国に日本も見習うべきだと考えます。ここの問題のところでブレがあると、町の農業振興計画作成に根本的影響を与えるのではないかと考えます。中井町としての取り組みと政府の農業政策、正確に言いますと、政府の農業政策の転換がかみ合ってこそ農業振興は大きく進むと考えますが、この辺のところ、町長、いかがでしょう。
町     長  まだ中井町としての結論はまだ出ていませんけれども、そういった部分で、いろいろ、要するに私が知らないことがいっぱいありますので、そうした部分では、ご享受を得てというか、いろいろ聞いて、その辺の部分では一番いい方向に進めていきたいなというふうに思っておりますので、ご理解を賜りたいと思います。
尾 尻 孝 和  それでは、農業振興計画策定の具体的な中身に入っていきたいと思います。まず最初に、この策定をするに当たって、現在の中井町の農業が果たしている役割、これをどのように捉えておられるでしょう。
環境経済課長  お答えいたします。町長の答弁にもございましたように、まず都市近郊にあるという中で、農産物を供給するという形だけでなくて、里山とか、そういった良好な景観ですね、生活環境、それから都会から近いという形の中で言いますと、都市住民とか町民との交流の場、そういったものがありまして、あとは防災機能ですか、多面的機能、大雨が降ったときに雨水がたまる、そういった防災機能ですか、そういったものを含めた中で多面的機能の役割を中井町の農業というのは果たしているのかなというふうに考えます。以上です。
尾 尻 孝 和  農業が果たしている役割についての報告でした。そのとおりだと思います。私も、この中井町の農業が果たしている役割、3つほど整理してみました。1つは、豊かな自然条件と首都近郊という2つの条件、これを生かして、さまざまな種類の野菜やミカンを初め、果実や牛乳などが生産され、首都圏に住む人々への食料安定供給の一角を担っていること、それから、豊かな緑とおいしい地下水などを生み出す里山の地域環境を維持する上でかけがいのない役割を果たしていること、そして3点目に、良好な住環境を備えたまちづくり、地域の経済やコミュニティの活性化のために欠かせない役割を中井町農業は担っていると思います。
 それでは、この中井町農業をこれから多面的に発展させていく条件、これをどこに見たらいいのか、いかがでしょう。
環境経済課長  お答えいたします。まず1点は、消費者である町民、県民ですね、その方が必要なニーズに応えること、単に野菜をつくるという形ではなくて、本当に消費者が求めるもの、町民が求めるものを農家も理解した中で、作物の生産、そういったものに取り組むことも必要かと思います。
 それから、先ほどから何度かお答えさせていただいておりますけれども、付加価値、平均的な外国から見ても、神奈川県内の平均的な規模から見ても少ない耕地面積でやっている中井町の農業、そういった中で、どうしても付加価値、プラスアルファの付加価値をつけなければ競争に負けてしまうおそれがあります。農作物の差別化というんですか、要はプラスアルファの、ちょっと言葉が汚いんですけれども、プラスアルファを出していく、それを表に出した農業というものに取り組むことも必要ではないかというふうに考えております。以上です。
尾 尻 孝 和  今後、中井町農業を発展させていく条件について、自然的条件や社会的条件について、今、お話あったかと思います。私も4つほど挙げてみました。中井町の農業、できない作物はないというぐらい温暖な気候、豊かな耕地など、自然条件が中井町には整っています。そして都市近郊という社会的条件とともに、安心・安全を求める消費者のニーズが広がっていると思います。そして、中井町の農家自身がすぐれた農業技術、工夫を、この間、蓄積してきているということがあります。そして4つ目には、これは中井町のみならず日本の農業全体が持っている条件でもありますが、それは、日本社会が世界でも有数の経済力を持っているということです。ドイツやフランスのように、その経済力を農業に生かすことができる可能性があります。それだけの経済力を日本は持っています。こういった条件を生かして、中井町の農業を多面的に発展させていくことが課題となります。
 今、やり取りのありました中井町農業の果たしている役割、条件を確認した上で、今後の中井町農業の担い手をいかにするかについて伺います。政府の農業政策は、担い手育成の名で、一部の大規模経営だけに農地や施策を集中し、多数の中小農家を政策対象から排除しています。政府のこの進め方は、中井町の農業の現状に合わないと思われます。兼業、高齢者世帯を含む多くの農家が営農を続けてこそ、中井町の農業振興は可能になります。今後の担い手は、続けたい人、やりたい人はみんな担い手として位置づけ、現に農業に従事している農家は可能な限り多く維持できるようにすることが基本と考えますが、いかがでしょう。
環境経済課長  お答えいたします。国の政策で農業振興といいますと、所得補償制度というものがございます。水田を対象としたものが特に多くんですけれども、そういった中で、中井町のような小規模の農家といいますと、どうしてもその補助対象外、そういったものになってしまいまして、平成21年から中井町のほうで国の政策における補助の対象とした方が2名ほどございます。金額で言いますと、1万円、2万円の補助金を国からいただいているという程度の補助金になります。もとが、尾尻議員おっしゃいますように、新潟、東北のほうに豪農地帯を対象とした補助制度というふうにしか事務局のほうも考えられません。そういった中で、中井町も国の補助制度に見合わない、対象とならない方を対象とした中井町独自の補助制度というものも幾つか検討させていただいたところでございます。
 これからも、国のほうの補助制度というのもどんどん毎年毎年変わっているのが実際のところでございまして、私ども所管課のほうでも、その辺を踏まえて、こういった農業振興計画を策定するに当たっても、それも含めて中井町独自の補助制度、また県のほうに、神奈川県に、地域に見合った補助制度の創設とか、そういったものを農業委員会からも、上部機関であります県農業会議、そういったほうに要望等、働きかけのほうをしているところですので、ご理解いただければと思います。以上です。
尾 尻 孝 和  この続けたい人、やりたい人はみんな担い手として位置づけながら、農業に従事している農家は可能な限り維持できるようにする、この視点が大変大事だと私は考えます。そして、この担い手を広げる上で、さまざまな人たちの中井町の状況に応じた取り組みについて伺うわけですが、現在行っている取り組み、手だてと同時に、農業振興計画の中でさらに具体化を検討されるものも含めて伺いたいと思います。
 まず、中井町の農家の多くを占める、高齢化している小規模な家族経営の農家、その困難を補う手だて、そしてこれら農家を維持する対策について、いかがでしょう。
環境経済課長  お答えいたします。今現在、小規模な農家を補う、尾尻議員おっしゃいます政策という形の中で言いますと、生産資機材の補助というのを、町のほうでは農業振興補助という形の中で、少ない金額の中で助成をしているのがせいいっぱいのところで、今、これから農業振興計画を策定するに当たって、先ほど言いました、少ない小さな規模でもプラスアルファの所得を目指せるように、いろんな政策のほうに取り組んでいきたい。兼業化されている農家でも、これをやれば、この作物をこれだけやればこれだけの利益が上がる、そういったものを理解していただけるように、政策の中に取り組んでいければというふうに考えております。今の状況では、この小規模な家族経営を守っていく、非常に重要なこと、ほとんどがその域に入っていますので、重要なことだとは認識しておりますので、検討していきたいというふうに考えております。以上です。
尾 尻 孝 和  厳しい農業経営の中で踏ん張りながら頑張っている専業農家があります。さらには、みずからの耕地を耕作するだけでなく、引退する高齢農家の農地ですとか、そういった作業を引き受ける集落での営農、専業農家が中井町にもあります。ここへの支援ですが、これら専業農家や集落営農などを支える手だて、規模拡大に伴うコストを抑えるための機械、施設の購入、更新などへの助成ですとか融資、土地改良負担の軽減や、実務や資金管理、販路確保、こういった現在の取り組みと農業振興計画の中での課題認識はいかがでしょうか。
環境経済課長  お答えいたします。中井町では、ほとんどの専業農家は1ヘクタール以上の規模で耕作されているというふうに認識しておりますけれども、73名ほどの専業農家がございます。そういった方に関しては、今、特に町のほうでも、小さな規模の農家とあわせた中で補助事業の助成関係を行っておりますけれども、これから、専業農家の中で15名が認定農業者、中井町の中で比較的大規模な農家で年間の農業所得が600万以上の所得がある方が15名ほどございます。そういった方は、認定農業者として認定を受けている方に関しては、農協さん等が行っているL資金、無利子の融資ですね、そういった制度のほうの紹介等を実施しております。
 小規模のほうの農家、高齢化の農家におきましては、これからの時代、町長の答弁にもございましたけれども、集落営農、また共同作業、そういったものへの取り組みをして、少ない面積をあわせて一緒に農業機械の共同化、そういったものも取り入れた中で農業振興を図っていきたいというふうに考えております。以上です。
尾 尻 孝 和  専業農家の話を伺いました。農家ではあるんですが、農業ではなかなかそれだけでは生活できないということで、会社勤めしていた方、そういう方が定年退職となって、本格的にこれから農業をやろうかと、こういう皆さんへの支援、取り組みはいかがでしょう。
環境経済課長  お答えいたします。今、勤めていられて、今、第2種兼業農家というんですか、その方が中井町のほうでも、全体の戸数で言いますと、約190件ほどがそういった状況になっております。これから先、父親の代から子どもの代にかわるときに、農業に従事するときに、農業に対しての知識がない、そういったものに取り組むときに、神奈川県の農業アカデミーとか農業普及所、神奈川県農業技術センター、それから、今、神奈川西湘農協では、中井事業所には営農指導員というのをこの4月から、1名ですけれども、配置されております。そういった方の指導というのを受けられるように、町としましても関係機関と協力しまして、営農指導、作付の栽培指導ですか、そういったものにも力を入れていきたいというふうに考えております。以上です。
尾 尻 孝 和  ことしの、これは3月発行の「中井農業委員会だより」ですね、これに、新規に就農された方の声が紹介されています。少し長くなりますが、一部を紹介したいと思います。
 私は松本に40アールの畑を借りて、化学肥料と農薬を使用しない有機栽培で、少量・多品目の露地野菜を生産しています。近隣の有機栽培農家で研修を受けた後、縁あって中井町に移り住み、農業を始めて2年が終わろうとしています。以前はサラリーマンでしたが、アウトドアが好きで、環境問題や田舎暮らしに興味があったことから就農を決意したのですが、家族や友人たちはとても驚いてあきれていましたが、今ではさまざまな面で応援してくれるので、大変感謝しています。野菜栽培の技術はまだまだ半人前で、天候、病気、虫、鳥獣、草を相手に奮闘する毎日です。妻と話をしていても、栽培中の作物が常に気がかりで頭の中から離れず、上の空のため、よく怒られます。定休のない生活ですが、苦労して育てた野菜をお客様が召し上がり、お褒めの言葉をいただくと、さらに品質のよいものを生産したいと、畑に向かう気力がわいてきます。今はまだ苦労のほうがまさっている営農状況ですが、何十年と続けたとき、振り返って、この道を選んで正解だったと思えるように、畑を耕し続けていきます。最後に、この町で新たな担い手がふえて、農業がにぎやかになることを願っています。こういう文章です。
 中井町で、この方のほかにも新規就農者が何人か生まれています。いきさつやきっかけ、何がその後押しをしたのか、現在、抱えている課題、これら皆さんの声などを紹介していただけますでしょうか。
環境経済課長  お答えいたします。さきの議員さんからの質問にもございましたけれども、今、平成23年から、中井町のほうに町外から参入された新規の就農者というのは4名ございます。それから、今現在ですと、3人の方が中井町で就農したいということで、今、農地を探したり、就農認定を受ける準備をしております。そのほか2名の法人ですね、一般法人と農業生産法人がございますけれども、2名の方が窓口に相談されているので、計5名の方が、今、いつでも中井町で農業をやりたいという形の中で相談に来られています。
 それから、そのほかに2名の方が、町内・町外に農業の研修、神奈川県農業アカデミーという農業大学校のようなところではなくて、里親のような農家のところに研修に行っている方が2名ございます。行く行くは中井町で農業をしたいという形の中で窓口のほうにお見えになっております。
 その新規の就農者といいますと、窓口は中井町農業委員会も受けていますし、神奈川県のほうで言いますと、神奈川県農業アカデミー、これは、農家ではない方、または農家の後継者、そういった方が、1年もしくは2年間程度で農業実習をしていく農業大学校のようなもので、そこを頼って相談に行かれます。たまたま中井町のほうが気に入ったから来たという、直接窓口に来られる方もおられますけれども、そういった取り組みの中で、今、新規就農者が中井町のほうは4名、1名は既に自分の農家住宅というのを建築をして松本に住んでおられる方もおられます。1名は午前中の質問の中にもありました空き家を利用した方。
 新規就農として入ってくるのにどうしても課題になってくるというのが、要は農業用の倉庫ですか、農業機械をしまっておく農業用倉庫が畑に欲しい、自宅に欲しい、そういった意見は皆さんおっしゃいます。それから、特に農業機械ですか、どうしても費用が加算してしまう。国の政策の中で、青年給付金という形の中で、最大150万円、5年間給付されるという制度もございます。この4名のうち2名の方は、それを対象として補助金をいただいて農業機械を買って、運搬用の軽トラックを購入して、そういった方もおられますけれども、どうしても45歳を超えてしまうと、その補助の対象外、また農業収入以外の収入があったりすると、その対象外になってしまうということで、今は中井町のほうでは2名の方がそういった国の補助金を使って営農に取り組んでいるということになっております。
 これから先も、今、個人経営では5名の方が中井町で農業に取り組みたいということで窓口のほうに来られております。県の農業アカデミーからも、中井町で就農したいということで相談を受けています。親身になって、中井町に就農していただけるように、事業課としても取り組んでいきたいというふうに考えております。以上です。
尾 尻 孝 和  今、話の中にあった青年就農給付金という制度ですね、45歳未満の就農者を対象にして年間150万と。これは、準備期間2年、それから経営開始後5年間支給されるということですが、2012年度からこの制度が開始されています。新規で農業をしようという人は、自営するのも初めてですし、加えて資金もありません。この給付金制度は欠かせないものと考えます。個人の努力ももちろん必要ですが、農家でない人は、まとまった土地もないし、行政や農業団体、地域の皆さんの支えがあって、そして、この給付金があることで、やる気のある青年の背中を押すことができているのかと思います。
 近年、定年退職者、あるいは若者の間で就農希望がふえ、農業への関心が高まっています。それを本格的な就農に結びつけ定着させる手だてが必要だと考えますが、先ほど来、話のあるような新規就農者にとって、資金ですとか農地、住宅の調達、作物や生産条件によって異なる生産技術を取得すること、それから生産した農産物の販路の確保、こういった大きな課題があります。この地域の農業者が日常的に作付や管理作業、あるいは販路の確保、経営や税金相談、こういうものに乗ったりできる体制づくりや、営農と暮らしの両面から支援することに特別の力を注ぐ必要があると考えますが、その辺で検討されていることはいかがでしょう。
環境経済課長  お答えいたします。今、中井町で4名の方が新規就農で既に中井町に入ってきております。販路がどうしても見つからない、そういったことの相談を受けます。私ども事業課としましても、隣にあります農協さん等へ、こういった新規の就農者がいるから行ってごらんとか、農協が持っている直売所への出荷、それから中井町のほうでは中央公園のほうにあります里山直売所、そういったところの事務局も農協が担っておりますので、そういったところの紹介等を実施しているところでございます。これから先も、少しでも、先ほども申したように、新規の就農者、大切な担い手の1つの手だてだと考えておりますので、一生懸命支援していきたいというふうに考えております。以上です。
尾 尻 孝 和  今まで農業をやったことがない方が、定年退職されて農業をやってみたい、こんな方もおられるかと思います。緑と自然の中で汗を流したい、晴耕雨読の生活に憧れる、自分でつくった作物を食卓に並べるだけでなく、できれば販売もしてみたい、少しは生活の足しにもなったらいい、こんなふうに考えられる方もおられます。こういった農家ではない方が、定年退職後、農業に取り組もうとする、そういう人への就農支援、農地の斡旋ですとか農業技術の援助など、こういった面ではいかがでしょう。
環境経済課長  お答えいたします。神奈川県では、60歳以上だったと思いますけれども、定年退職を迎えるぐらいの、俗に言う団塊の世代というんですか、何年からできた制度か、今、認識しておりませんけれども、中高年ホームファーマー制度というのをつくっております。団塊の世代、定年を迎える方が、余暇を利用した農作物づくりということで、市民農園、中井町とか、一般的に市町村が持っている市民農園規模ではなく、100から200平方メートル程度の農地を、農業の専門員ですか、県の専門員になりますけれども、その方の営農指導を受けながら、作付の指導を受けながら講習ができる、1年、2年という期間になりますけれども、制度を持っております。中井町でも、その農場は3農園かな、今でもございます。40人ほどが中井町でも研修を受けております。神奈川県全体では200人近くが、その中高年ホームファーマー制度を利用して農業研修を受けているのが、正しい数字ではございませんが、200人程度だということは確認できておりますけれども、研修を受けております。
 それが、研修で2年間という期間が終わってしまうと終わりという形ではなくて、さらに農業、実際に続けていきたい、まだ6364なので動けるから農業をやっていきたいという方は、神奈川農業サポーターといいまして、農地法でも農業経営基盤強化促進法とか、そういった法律にとらわれない神奈川県独自の制度になりますけれども、神奈川農業サポーター制度というのがございます。中井町もそれに取り組んでおりまして、要は、農地法ですと、中井町の場合、40アール以上の農地を取得していなければ農作物を耕作できない、農業として取り組みができないという制度がございますけれども、そういった制度にとらわれない農業サポーターという形で、今、4名の方が10アール規模で農業に従事しております。少なからず、耕作放棄地の解消、黙っておけば耕作放棄地になってしまうという土地を、その方たち4名が、今、多分合計で60アール、70アールぐらいになっていると思います、耕作に従事しているという状況がございます。中井町も、事業課は神奈川県になりますけれども、県と同調して、こういった制度を活用して就農支援をしていきたいというふうに考えております。以上です。
尾 尻 孝 和  近年、なりわいとしての農業、就農、これとは別に、今、ちょっと話があったこととも関連しますが、市民農園ですとか体験農業、グリーンツーリズム、農業ボランティア、こういったさまざまなチャンネルで、町民や近隣自治体、都市住民の多くが農業に触れて、自然にかかわる取り組み、こういうものが関心を持たれています。荒廃した山林や竹林、耕作放棄を余儀なくされた農地に人が入り、里山の再生を図る上で、これらの取り組みは1つの鍵にもなるかと考えます。荒廃した里山を活用して、山菜、キノコ、タケノコなど、地域資源を活用した取り組みや、自然環境を活用したレクリエーション、あるは保健休養など、都市住民が農業に触れ、自然にかかわる取り組みを、これらを農業振興計画の中に位置づけたらいかがかと考えますが、いかがでしょう。
環境経済課長  お答えいたします。農業振興計画を策定するに当たっては、単に農業者だけで策定するという形ではなくて、先ほど町長の答弁にもございましたけれども、当然消費者、都市住民という形ですか、そういった方との交流というのも大切な取り組みになると考えております。
 町独自では、里山農業体験事業、ことしは40家族ぐらいですか、稲作体験や農作物の栽培から生産、収穫までを体験していただく事業を実施しております。神奈川県でも都市農業というのを大切に考えまして、神奈川農業大発見、そういったものにも、都市住民との交流、観光バス1台を貸し切りをして、神奈川県下あちこちの市町村で農業体験をするという事業を実施しております。そういったものも非常に重要なことで、消費者の理解を得るということが農業を続けていく中では大切な1つの要件になってきておりますから、町としましても取り組みのほうは進めていきたいというふうに考えております。
 また、中井町商工振興会では、中井中央公園北側の山林を活用しまして、里山づくりに取り組んでおります。ことし2月、3月に、旅行会社を組み込みまして、里山体験事業という形で、グリーンツーリズム、開成町と同調しまして実施したところでございます。参加者のほうからは、東京からこんなに近くの中でこんな自然があるんだということで、何人かの声はお聞きしましたけれども、感激して帰ったというのを耳にしておりますので、これから先も、手を入れなければただの雑木林になってしまいますので、里山という言葉を大切にして事業のほうに取り組んでいきたいというふうに考えております。以上です。
尾 尻 孝 和  今、話の中でグリーンツーリズムのことも具体的に挙げられました。この中井町の里山、緑豊かな里山でゆっくりと滞在しながら、地域の人々との交流を通じ、その自然や文化、生活、人々の魅力に触れて、さまざまな体験を楽しむ余暇活動として、これらは全国で、今、広がり始めています。中井町でも、巨大都市の近郊という条件を生かすことで、長期滞在しなくても、場合によっては日帰りで繰り返し訪問できるグリーンツーリズム、こういうような位置づけも可能かと思います。
 以上、ここまで農業に取り組んでいる人たち、これから取り組もうとしている人たち、この担い手をいかに広げるかについて幾つかの分野で伺ってきました。ここから、農業振興計画策定に当たって、別の角度から何点か伺いたいと思います。
 まず、農業者と消費者の協働を広げて食の安全と地域農業の再生を目指す取り組みについてですが、輸入食品からの残留農薬の検出、消費者には見えないままでの遺伝子組みかえ食品の横行、BSE牛肉の不安など、食の安全をめぐる問題が山積しています。消費者の見えるところでの農業生産、有機栽培など、生態系と調和した環境保全型の農業の取り組みなど、農業者と消費者の協働を広げて、食の安全と地域農業の再生を目指すことが大切かと考えます。
 また、近年、スローフードが叫ばれるようになりました。アメリカ流のハンバーガーなど、ファストフードと言われる食文化に対抗して唱えられ、ヨーロッパから始まって、その運動が世界に、今、広がっています。その土地の伝統的な食文化や食材を見直そうという、このスローフードへの取り組み、そして食文化の継承・発展への支援も重要かと考えます。農業者と消費者の協働、食の安全やスローフードへの取り組みで検討されることはいかがでしょうか。
環境経済課長  スローフード、耳にしたことがなくて申しわけございません。答えづらいんですけれども、今、食の安全という形の中で言いますと、議員おっしゃいます、これからの農業という形の中で言いますと、作物をつくる農家は、低コストで高品質、それから付加価値のついた作物の生産というものをやっていきたいというふうに考えていると認識しております。逆に消費者というのは、消費者が求める価値というのは、食品の安全・安心、それから新鮮、そういったものを求めている時代ではあると思いますけれども、選ぶのはあくまで消費者、安い他国から入ってくる野菜を求める方、人それぞれだと思います。そういった中で、中井町の農業ができる取り組み、地産地消、それから農家と加工業者等が連携した6次産業、そういったものを少しPRして、それから環境に優しい野菜づくり、そういったものを、中井町らしい、少量であっても多品目、それがそういった安全・安心の野菜なんだということを強くPRした中で、消費者と農業者が協働というんですか、一緒になって中井町の農業をつくっていくというふうな取り組みができるように、計画づくりに反映させていければというふうに考えます。以上です。
尾 尻 孝 和  次に、耕作放棄地の広がりと鳥獣被害の対策ですが、耕作放棄地、これをそのままにしておけば、雑草の被害のみならず、イノシシやシカのすみかをひろげるというのは、冒頭、話をしたとおりだと思います。これらふえ続ける鳥獣被害ですね、これは、今、耕作している農家の生産意欲も失わせますし、集落の衰退に拍車もかけますし、それがさらにまた鳥獣害への対抗力も弱めるという悪循環に陥っていると思います。根本的には、農業が成り立って農村で元気に暮らせる、そういう条件整備、これが不可欠だと考えますが、これらふえ過ぎる鳥獣を減らす取り組み、現在、さまざま取り組まれていますが、そしてあわせて、今後の取り組みの基本方向はいかがでしょう。
環境経済課長  お答えいたします。鳥獣被害、カラスなどの鳥だけではなくて、今ではイノシシやシカ等の大型獣による被害が、ここ数年、中井町でも増大している状況でございます。せっかくつくっても、収穫する前に全て食べられてしまう、販売もできない、そういった状況が農家からも多く耳にしております。
 昨年、イノシシの捕獲数が、前回の議会のときにお答えさせていただきましたけれども、40頭を超えている状態になっております。特に古怒田、鴨沢、中井町で言う西部、それから二宮町との境、一色、境ですか、その辺の被害を多く聞いております。そういった中で、あくまで農家に関しましては、自己防衛という形の中では、町の取り組みとしましては、電気柵とか防護柵等の設置に係る費用の補助というのを実施しております。また、猟友会、特措法に基づく、今までは保護法に基づく、どうしても有害鳥獣の駆除という形の中で取り組みをしていましたけれども、町長の命令で、捕獲・駆除をするという制度で、1カ月ほどの猟友会による駆除を実施しております。
 また古怒田自治会のほうでは、古怒田生産組合という形の中で、農家みずからが駆除のほうに取り組んでいく中で、町のほうも、その見回り等、駆除に係る費用の補助を実施しておりますが、昨年から農業の支部長さん等にお願いをしてきた中で、地域での活動に取り組んでくれというお願いをさせていただいたところ、28年度、これから猟の、わな資格の免許等の講習会等が神奈川県でも実施されていきますけれども、2つ、3つの自治会のほうでは、それぞれの中で、地域の中で駆除に関して取り組みをしていきたいということで、町のほうにも相談に来ていただいているということを耳にしております。
 町としましても、有害鳥獣の駆除、どうしても駆除といいますと、自分の畑を守るだけだと駆除にはつながりません。絶対量を減らさなければどうしても間に合わない状況に陥っているというふうに認識しております。これから先も、28年度、29年度に向けても、猟友会や農協等の関係機関等とよく協議しまして、駆除に向けた取り組みに努めてまいりたいと思います。以上です。
尾 尻 孝 和  中井町の農家が蓄積してきたさまざまな生産技術、農業技術ですね、これら技術を継承することが今後の中井町農業を維持していく上で大事なことになると考えます。今、農業に従事している人の年齢構成を考えれば、ここ10年が勝負になるのではないかと思います。この農業を何十年と頑張ってきた人たちから、そのノウハウ全てを継承する時間というのは、もう本当に限られていると思います。一人ひとり後継者をしっかりサポートしていく体制、具体的な取り組みが求められると考えます。新規就農者への研修など、農業技術の継承、また研修や技術指導を引き受ける団体や農家との協力体制、これらへの支援はどのように考えておられますでしょう。
環境経済課長  お答えいたします。新規就農者とか、中井町の、今、現状の農業者、営農指導等に関しては、神奈川県の農業技術センター、足柄地区事務所ですか、そちらのほうが営農指導等はしていただいております。また、先ほどもちょっと答弁の中でお答えさせていただきましたけれども、神奈川西湘農協の中井の事業所では、この4月から、購買とか、そういった形ではなくて、営農指導に関して専門員を設置していただいております。農家の方が、こういったもの、病気、虫、被害、そういったものの取り組みの中で効果的なものが得られるように、営農指導のほうを町からもしっかり協力体制をとってやっていきたいというふうに考えております。
 ちなみに参考までに、県の営農指導のほうに関しては、専門員が、野菜類、それから柑橘類、それから酪農、そういった幾つかの分類に分かれて指導のほうをしていただいていますので、町のほうからも農業者のほうに、そういった指導がこういった機関でできるというものを、改めてまたPR等をしていきたいというふうに考えております。以上です。
尾 尻 孝 和  農家と農協ですとか各種団体、行政、これらが一体になって互いに支え合い、協力する関係、これを築いていくことが、今後の農業をどうするかという点で大事になってくると思います。集落営農や担い手への支援、農産物の販路の確保ですとか、地域農業の振興、農村社会の維持にこれらは欠かせないことになってくると思いますが、それぞれの自主性を尊重しつつ、お互いにその役割が果たせるような、そういう関係をつくっていくことが大切と考えますが、その辺のところでいかがでしょう。
環境経済課長  お答えいたします。尾尻議員おっしゃるとおりで、農業振興を図っていく中では、行政だけ、農業者だけでは当然成り立っていかないというふうに考えます。また、行政のできる範囲、行政がやるべき仕事、農協さんがやるべき仕事、神奈川県の農業技術センターがやるべき業務、それぞれが持つ役割というのがあると思います。その辺を踏まえて、今後も農業振興のほうに努めてまいりたいと思います。以上です。
尾 尻 孝 和  学校給食ですとか、あるいは町内企業などでの地元農産物の利用拡大、こういった、学校教育、町民生活、あるいは町内や近隣で働く人々との結びつきを生かした町の農産物振興、そして消費の拡大対策、これも幾つか行われており、また検討もされていると思いますが、いかがでしょう。
環境経済課長  お答えいたします。地産地消という形の中でも、学校給食等は重要なことという形の中で、中井町の給食センターでは、月に2回ほど、地元産、中井産の野菜を使った給食の提供をしております。また、米飯給食ですか、それは中井町産ではなくて、神奈川県産という形になると思いますけれども、それも週3回ほど、米飯給食という取り組みもして、地産地消に努めております。
 また、中井町のほうは、グリーンテクの工業団地の中に幾つか大きな企業もございます。そういった中で、食堂等が配置されている企業が幾つかあることは認識しております。企業連絡会等もございますので、そういったときに、事業課として、中井町の野菜が使えるのかどうかとか、そういったPRのほうに努めてまいりたいと思いますので、ご理解いただきたいと思います。
尾 尻 孝 和  家庭の生ごみですとか食品廃棄物、こういった堆肥化や里山への手入れも兼ねた落ち葉の堆肥化、落ち葉については放射能汚染の対応も必要という話を伺っていますが、そのほか伐採した枝ですとか竹、こういったものの活用、リサイクルも生かした有機農業、資源循環型の生産体制を広げていく、こういった取り組みですね、これらについてはいかがでしょう。
環境経済課長  お答えいたします。ごみを少なくさせるための手段としまして、ちょっと言葉が浮かばなかったんですけれども、中井町のほうでは、剪定枝等のチップ化を平成24年ごろから実施しております。東日本大震災の起因に伴う東京電力の原子力発電所の放射能問題から、一昨年から中井町でも、そのチップ材の放射能検査を実施した中で、農家への肥料として使えるように、放射能検査を、安全だというのを確認をした上で、肥料として配布をしているところでございます。
 落ち葉と枯れ葉に関しましては、まだ町のほうでは実施はしていないんですけれども、基本的な県の指針におきましては、放射能検査をしない限り外に出してはいけない、自分の土地以外のところに出してはいけないという方針になっておりますので、今後、そういった腐葉土として利用ができる取り組みができるのかどうか、また県のほうと改めて、動向を踏まえて、町のほうも同調していきたいというふうに考えております。
 また、足柄上衛生組合、ちょっとあれなんですけれども、有機の中ではし尿を使った堆肥というのを実施しております。昨年、足柄上全体では5,110キロの堆肥を、有機肥料という形の中で農家に配られたということを聞いております。以上です。
尾 尻 孝 和  農外企業ですとか、株式会社一般の農地利用について伺います。利益を上げることが前提の株式会社ですね、これが農業に進出するのは、主に、まず優良農地になり、そこで成り立っている現在の農家や集落営農と競合し、追い出すことになりかねません。農地の利用は、その農家と、その共同組織、これを優先しなければいけません。そのためにも、農業委員会の体制、役割が重要かと考えます。株式会社の農地所有の解禁、農業生産法人のさらなる要件緩和には厳しく監視することが必要と考えますが、現在の現状、そして今後の方向はいかがでしょうか。
環境経済課長  お答えいたします。今現在、中井町のほうでは、農業生産法人も、一般法人も参入してはございません。先ほど答えたように、今、窓口のほうに一一般法人、一農業生産法人が相談に来ておりますので、今年度、もしくは来年度に参農される可能性はあるかと思いますけれども、今現在はございません。
 こういった中、法律の中で、そういった法人に関しては、毎年1回、農業委員会に、今の事業経過、事業報告というんですか、報告する義務等がございますので、その辺はしっかりと農業委員会のほうで検査というんですか、確認をして、きちっとした耕作が続けていけるように指導等をしていきたいというふうに考えます。以上です。
尾 尻 孝 和  以上、農業振興計画の作成に当たって伺ってきました。最後になりますが、農業振興計画の目標設定、これをどのように設定しようと考えておられるか伺います。
環境経済課長  お答えいたします。まず計画のほうは、10年先を見込んだ中で計画を策定させていただきたいと思います。中には、作物別、また地域別、そういったもので、幾つかの施策の中で目標数値というのをつくった中で取り組みをして、中間、またここ10年で平均年齢が8090になってしまうわけですから、その辺の中で、取り組みのほうを検討していきたいというふうに思います。以上です。
尾 尻 孝 和  ぜひ具体的な論議の中で、この目標数値の設定をしていただけたらと思います。
 中井町の山林や竹林、あるいは耕作を放棄せざるを得なくなった農地、これが、当初話しましたように、町の面積の3分の1、20世紀にはいなかったイノシシ、シカ、21世紀に入ってわずか15年ほどで町の3分の1をすみかとしてしまいました。
 現在、中井町面積の4分の1を占める耕作地、ここで、今、農業に携わっている人、その8割から9割を60歳代、70歳代、80歳代の年齢層で占めている現実があります。あと10年後には、これらの人がどれだけ農業に携わっていられるか。中井町の里山と農業の現状を見たとき、抱えている問題はあまりに大きく、これらを10年というスパンで打開していくことは並大抵のことではないと思われます。
 中井町で農業に携わる皆さんはもちろんのこと、中井町町民の知恵と意見を集め、さらには近隣自治体の市民、町民や都市住民の動向、意向もつかみ、生きた農業振興計画として練り上げ、その計画を活用して、中井町の農業振興と豊かな里山を生かしたまちづくりが大きく動き出すよう期待し、質問を終わります。

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